乳幼児期の子どもたちは、単語の意味をどんなふうに理解しているの?
新しい単語をおぼえるときに、幼い子どもが私たち大人と同じように意味を理解しているとは限りません。子どもたちは、時として不思議な単語の使い方をします。たとえば、ある子どもは「鼻」という単語を実際の〈鼻〉だけでなく、〈ブーツのつま先〉や〈ハンカチ〉などの〈つまんで引っ張ることができるもの〉全般に対して使っていたそうです!
子どもが初期におぼえる単語をながめてみると、「クック」(靴) や「コップ」といった、いわゆるモノの名前が多くを占めることが知られています。「クック」(靴) という単語は、大人にとっては〈モノの名前〉です。でも、子どもにとっては、たとえば〈靴を履く〉とか〈おでかけ〉といった意味を含んでいるかもしれません。実際に、私たちの調査では、およそ1歳半ごろの子どもたちは「クック」といった単語を〈モノ+行為〉の総体としてとらえていることが示唆されました。その後、2歳に近づくにつれて、単語の意味は変化 (分化) し、「クック」は行為によらない〈モノ〉の名前だということが理解できるようになっていきます。
現在はさらに、親子でやりとりをしているときに、養育者がどのように単語の意味を子どもに伝えているのか、また、その伝え方が子どもの年齢によってどのように変化するのかを調べています。加えて、靴やコップのように、使い方がある程度決まっているモノに関する単語を聞いたときに、子どもがそのモノ自体やモノの使い方にどのように注意を向けるのかを調べています。
このような調査を進めることで、子どもたちの独特なことばの世界をより深く理解したり、言語発達の時期に応じたより好ましい声かけの仕方ややりとりの仕方を提案できる可能性があります!
参考文献
Hagihara, H., Yamamoto, H., Moriguchi, Y., & Sakagami, M. (2022). When “shoe” becomes free from “putting on”: The link between early meanings of object words and object-specific actions. Cognition, 226, 105177. https://doi.org/10.1016/j.cognition.2022.105177
Hagihara, H., & Sakagami, M. (2020). Initial noun meanings do not differentiate into object categories: An experimental approach to Werner and Kaplan’s hypothesis. Journal of Experimental Child Psychology, 190, 104710. https://doi.org/10.1016/j.jecp.2019.104710